1.歯科矯正学の歴史-2

1.歯科矯正学の歴史-2

矯正力としては以上のような金属の弾線のほか、ゴム輪や圧開ねじが応用されるようになりました。Farrar,J.N.(1839~1913)はとくに歯根の移動にこのjack screw を用いたが乱用したきらいがあり、装置は複雑をきわめていた。

移動される歯に対して抵抗となる歯は、より強い歯根をもつ歯でなければならないという、いわゆる固定の概念を示唆したのはDesirabode(1843)です。そしてこの固定をさらに上下の顎の間で用いたのはBaker(1893)です。顎外から矯正力を求めるいわゆる顎外固定法は以上より早く、1822年にGunnellによって考案されましたが、これはのちAngleによって広く用いられるようになり、今日でもかなりの賛同者がいます。

以上のような歯科矯正学の先駆者たちや、同時代の人々からぬきんでてすぐれた功績を残しだのはAngle,E.H.(1855~1930)で、彼こそ専門分科としての近代歯科矯正学の扉を開いた人といえます。Angleの功績は、不正咬合の分類法とそれに対応する治療法の確立、体系づけられた教科書、装置の規格とその改良、専門化のための歯科矯正学の教育学級の創立(1900)などがあげられますが、さらに専門学会の設立(1901)や専門学術誌の刊行(1907)にも彼は大きく寄与しました。

Angleと同時代のCase,C.S.(1847~1923)もAngleにおとらぬすぐれた矯正家です。彼は不正咬合の治療を顔面との調和という立場に主眼をおいて考えたため、それまでの不正咬合の分類では採り上げられなかった上下顎前突や上顎の後退などという概念を採り入れたのが特徴です。その立場から矯正治療のための抜歯の必要性を強調したために“非抜歯論”者であったAngleとの間に長い“抜歯論争”がくりひろげられたことは有名で、この抜歯問題は古くて新しい問題として今日にも引継がれています。また歯根の移動の重要性や、口蓋裂患者のリハビリテイションに力をつくしたのもCaseで、大変大きな功績を残しました。

以上は20世紀の初めの4半世紀までの歯科矯正学の発達のあとを、主として矯正装置の移りかわりという点に焦点をおいてふりかえってみたものですが、矯正装置や方法は術者の歯科矯正学に対する基本的な理念を端的に表現するものであるため、装置の変遷をかえりみることは無意義ではありません。

1925年以後歯科矯正学は理論面でも臨床面でも専門分科として急速な発達をとげていきます。