3.矯正治療の目的とその目標-5

3.矯正治療の目的とその目標-5

1.不正咬合によってもたらされる障害について

10)心理的な影響を与える

生存競争の激しい近代社会に生活する者にとっては、他人より常に精神的にも肉体的にも経済的にも優位に立ちたいという欲求はますます熾烈となってきています。肉体的の問題にしても単に健康でありたいという欲求だけではなく、他人よりすぐれた体力や容姿をもちたいという欲求が合まれています。これらの欲求が満たされることが不十分であると、いわゆる欲求不満という緊張状態が生れますが、その反応としてときに正常な適応行動が妨げられ、好ましくないパーソナリティが形成されることがあります。

歯ならびや咬合が悪いということは近代社会では生理学的な問題であることよりは、多くの場合心理学的な問題であることが多く、個人の社会生活の中で劣等感として存在するために円滑な適応ができないことがしばしば見受けられます。一見無邪気な世界と思われがちのこどもの社会生活の中でも、こうした肉体的の劣位が残酷な批判の対象となっていることは否めません(図3-5)。

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もちろん欲求不満がすべて異常な行動をひきおこすものではありませんが、歯ならびの悪さというような自主的解決のむずかしい不満は、ときに社会生活からの逃避や退行とたってあらわれ、またまれには攻撃的な行動が生れることもあり、こどもの心理発達のうえからいっても軽視することはまちがいだと感じます。事実矯正家の多くは、矯正治療によってこどものパーソナリティや適応行動が改善されることを経験しています。しかしこのような心理学的問題をあまりに重視しすぎて、矯正治療への動貌づけをこの面にだけ絞ることは避けなければなりません。

以上不正咬合によってもたらされるであろう種々の障害をあげましたが、それぞれにおいてはっきりした因果関係の実証が乏しいうらみがあり、あまりにこれらを強調することは我田引水のそしりをまぬがれないでしょう。

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